あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」中止と 日本の市民社会スペース狭隘化を憂慮する(声明)

2019年8月5日
市民社会スペースNGOアクションネットワーク

わたしたち、全国の国際協力分野のネットワークNGO7団体で構成する「市民社会スペースNGOアクションネットワーク(以下、NANCiS)」は、この度の、あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」に加えられた圧力、抗議、脅迫により同展が中止に至ったことを深く憂慮するとともに、今回の事態が、日本の市民社会スペースの深刻な危機であることを、ここに表明します。

「市民社会スペース」とは、市民による言論、表現、活動、結社等の社会的な自由度・許容度を社会スペースの広がりで理解する、近年国際的に広まってきた用語・概念ですが、その観点からみて、今回の事態が、高位の政治家・公職者から、一般市民までもが加わった圧力、抗議、脅迫によって引き起こされたことは深刻です。これらの行為は、世界人権宣言や国際人権規約、人種差別撤廃条約など、国際的に認められた人権規範・基準に明らかに抵触するものです。(例えば、1)芸術を含めた表現の自由、干渉されることなく意見を持つ権利(世界人権宣言19条、自由権規約(B規約)19条)、2)差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道の法律での禁止(自由権規約(B規約)20条2項)、3)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めない(人種差別撤廃条約2条以下、特に4条C項)など。)

NANCiSは、今回の事態で失われた表現や鑑賞の場や、それを通じて行われるはずだった社会的な対話の機会が、適切な形で回復され、平穏のうちに人々に提供されるよう、あいちトリエンナーレ2019の主催者や関係者に強く要望します。また、上記の展示・鑑賞環境を整えるため、政府、自治体、警察などの諸機関が、適切な措置を取り、表現者や鑑賞者の権利を擁護することを強く求めます。さらに、政治家や公職者が、アートがもつ主張を尺度として、公金支出の是非や展示の中止に言及することは、事実上の「検閲」であり、今回これらの発言を行った菅官房長官、河村名古屋市長に対し、強く抗議し、発言の撤回と謝罪を求めます。

以 上

【本声明に関するお問い合わせ先】
市民社会スペースNGOアクションネットワーク
東京都新宿区西早稲田2-3-18アバコビル5F (特活)国際協力NGOセンター(JANIC)気付
URL: http://nancis.org/   E-mail: info@nancis.org

 

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