あいちトリエンナーレ2019に対する 文化庁の補助金不交付決定の撤回を求めます(声明)

あいちトリエンナーレ2019に対する
文化庁の補助金不交付決定の撤回を求めます(声明)

2019年10月5日
市民社会スペースNGOアクションネットワーク

文化庁は9月26日、あいちトリエンナーレ2019への補助金の不交付決定を行いました。私たちは表現の自由を含む市民社会の自由な活動領域(市民社会スペース)を擁護する立場からこの決定が不当であると考え、直ちに撤回するよう求めます。

私たちは、8月5日付で企画展「表現の不自由展・その後」の展示中止に関する声明を発し、「今回の事態で失われた表現や鑑賞の場や、それを通じて行われるはずだった社会的な対話の機会が、適切な形で回復され、平穏のうちに人々に提供されるよう」求めました。その後多くの人々や団体の再開を求める声と愛知県が設置した検証委員会の報告を受け、大村愛知県知事は「再開を目指したい」と表明するに到りました。文化庁はこの表明の直後に不交付決定を行い、それを萩生田文部科学大臣自らが発表しました。

今回の事態の異常性は文化庁が補助金申請を採択したにもかかわらず、事業が行われている最中に手続きの不備を理由に補助金の全額を不交付にする決定をしたことにあります。しかもその決定が、愛知県知事の「表現の不自由展・その後」再開の表明直後であったこと、また、8月2日の記者会見で菅官房長官が「表現の不自由展・その後」の展示内容を問題視する発言をしていたことから、同企画展の内容を狙い撃ちにしたものであると考えざるを得ません。

一度採択した申請事業への不交付決定は、行政のガバナンスの最低限の要件として求められる政策一貫性と予測可能性を決定的に欠いています。通常ではあり得ない決定が行われたことは、文化庁の独自の判断を越えた政治的な圧力があったと考えるのが自然です。このような補助金行政の異常な逸脱はひとり芸術分野の関係者のみならず、広く補助金の恩恵を受ける団体、とくに市民団体の自由かつ独自の活動を圧殺するものです。

日本政府始め160か国の政府・国際機関等が参加して採択された「援助効果」についての釡山援助効果向上ハイレベルフォーラム(2011年、韓国)の決議文には、「私たちは、CSO(市民社会組織)が独立した開発アクターとしての役割を果たすことを可能にするよう、それぞれの約束を実施する。特に、合意された国際的権利を満たし、CSOの開発への貢献を最大化する活動に好ましい政策環境に焦点を当てる」とあります。「CSO」を「芸術家」と、「開発」を「社会発展」と読みかえることが可能です。あいちトリエンナーレは8月5日の声明で述べたように、作家と市民と行政が作り上げた「表現や鑑賞の場や、それを通じて行われるはずだった社会的な対話の機会」であり、社会の創造的発展に貢献する場です。これは政府が擁護すべき政策環境にほかなりません。

今回の決定が前例になれば、市民と市民団体全体に萎縮や忖度がひろがると同時に、自治体にも萎縮や忖度がひろがる恐れがあります。政策一貫性と予測可能性を欠いた不合理な補助金行政がまかり通ることを危惧します。私たちは文化庁に対し、あいちトリエンナーレ2019に対する補助金不交付の決定を直ちに撤回するよう、改めて強く求めます。

以 上

◆本声明のダウンロード(PDF,174KB)

【本件に関するお問い合わせ先】
市民社会スペースNGOアクションネットワーク
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(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)気付
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