【G7広島サミット活動報告②】G7広島サミットおよびCivil7(C7)におけるNANCiSの活動

(2023.10.11更新)

市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)
コーディネーター 加藤良太
 
はじめに
 
 2023年5月19日(金)〜21日(日)に行われたG7広島サミットに対して、国内外の市民社会はエンゲージメントグループ「Civil7(以下、C7という)」を組織して活動しました。その中で、私たち、市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)も市民社会の一員として、1)C7「しなやかで開かれた社会」ワーキンググループおよび「C7サミット2023」(同4月13日(木)〜14日(金)東京にて開催)への参加、2)「みんなの市民サミット2023」(同4月16日(日)〜17日(月)広島にて開催)への参加、3)G7広島サミット当日のメディアワークへの参加(同5月18日(木)〜22日(月)広島にて実施)を行いました(*1)。
 
 みなさまもご存知のように、2000年代以降のG7あるいはG20において、国内外の市民社会が連携してその時々のグローバルな諸課題に関する政策提言書をまとめ、ホスト国首脳を窓口にG7・G20へ提出するとともに、ホスト国のシェルパや首脳との対話や、市民社会独自の国際会議(カウンター・サミットと呼ばれる)を開くなどして、市民社会の主張の影響力を広げるべく努力してきました。後にこれらの動きは「公式化」し、同様にG7・G20への政策提言を行なってきた他セクターとともに「エンゲージメントグループ」と位置づけられ、G7・G20の枠組みの中で公式に活動できるようになります。それが、G7では「C7」(G20では「C20」)と呼ばれるものです。
 
C7「しなやかで開かれた社会」ワーキンググループおよび「C7サミット2023」への参加
 
 C7では多岐にわたるグローバル諸課題を扱うため、政策提言に向けていくつかのテーマごとのワーキンググループを設け、2名のコーディネーター(1名は国際的な市民社会から、1名はホスト国市民社会から)をおいて、そのもとに関心のある国内外の市民社会関係者が集まり、前年度からの各テーマの議論を引き継ぎながら、政策提言内容のアップデートを図ります。今回、NANCiSはその活動テーマに近い「しなやかで開かれた社会」ワーキンググループへの参加を要請され、国内コーディネーター選出のサポート、政策提言書作成に向けて、ホスト国および東アジア市民社会の意見を取りまとめるサブワーキンググループのコーディネート、「C7サミット2023」での「しなやかで開かれた社会」ワーキンググループの分科会での登壇などを担いました(*2)。ワーキンググループ名の「しなやかで開かれた社会」は、まさに市民社会スペースのことをそのあるべき姿を示す表現で言い換えたものであり、それだけ、市民社会スペースへの圧力が強まり、狭隘化が進んでいることが国際的な市民社会の共通認識になっているということでもあります。
 
 一方で、その背景にあるものは各国・各地域によっても微妙に異なります。NANCiSとしては、このC7での活動の中で、G7の構成国に少ない、日本をはじめとした東アジア圏の伝統的な権威主義や父権主義に依拠した社会のありようや、そのもとでの市民社会の模索(苦闘)の様子、また国際的にも関心が高い中国やインドシナ半島諸国での権威主義の台頭と各国間の緊張の高まりに対して、東アジア地域の市民社会が対話的なアプローチで対抗しようとする様子について、できるだけ知ってもらい、理解してもらうことに努めるようにしました。そのインプットがあったからでしょうか、C7サミット2023の中で行われたホスト国(日本)シェルパとの対話の中での、日本政府シェルパ、サブシェルパの慇懃無礼で「木で鼻をくくったような」答弁のありさまをみて、海外市民社会関係者が「なるほどね・・・」と妙に合点がいった反応をしていたのは、皮肉な「成果」であったかもしれません。
 
「みんなの市民サミット2023」での分科会「『ラリー』と『ロビイング』のあいだで 〜市民社会とG7の関わりを問い直す〜」の開催(*3)
 
 G7での市民社会の活動は、国際あるいはホスト国の全国規模の市民社会が主体となるC7とともに、ホスト地域の市民社会が主体となって開催される「市民サミット」(カウンター・サミット)も行われます。今回も、広島の市民社会が主体となり、前述のとおり、C7サミット2023の直後に広島市内の平和公園国際会議場などを会場に「みんなの市民サミット2023」が開催されました。NANCiSも同サミットに参加し、分科会「『ラリー』と『ロビイング』のあいだで 〜市民社会とG7の関わりを問い直す〜」を全国のNGO・NPO有志のプロジェクト「あどぼの学校」(*4)運営委員会と共に開催しました。同分科会は、近年のG7など多国間や国際機関による国際会議への市民社会の参加が定着し、市民社会の言論・活動空間や能力を拡げてきた一方で、開催地の人々の日常生活が大きく制約され、集会・デモの制限や、市民社会、社会運動、労働運動関係者への捜査・弾圧など、自由な言論・活動への制限・圧迫が生じることもある、G7と市民社会の関わりの明暗を見つめながら、『ラリー』(集会・デモ)から『ロビイング』(政策提言活動)まで、多様な主張、方法、立ち位置で今回のG7広島サミットに取り組む全国の市民社会関係者で集まり、しなやか・したたかに「連帯」する市民社会の活動のあり方を共に考える場をもとうということで企画されたものです。分科会には会場とオンラインで30名余が集まり、政策提言から反対、ベテランからユース、広島から北海道、関東、東海、関西と、多様な立場、活動歴、地域の市民社会関係者が参加しました。
 
 分科会では、各々の立場からのG7広島サミットへの取り組みが共有され、特に広島の方からの「核兵器を保有・使用した国々を含むG7が、都合よく『ヒロシマ』を利用して欲しくない」との意見が強く印象に残りました。G7開催に反対する立場で活動する広島の方からの「ラリーもロビイングも、各々の持ち味を生かし、尊敬し合って連携できたらよい」とのエールには多くの参加者が励まされました。また、ユースの方からの「ユースの声が求められているはずなのに、実際にはユースが参加し声が出せる社会空間が狭められている」との切実な問題提起には、各々が認識を新たにしました。G7は開催地の人々にとって降って湧いた話であり、知らぬ間に地域が歓迎ムード一色となり、一人ひとりの日常が削られ「動員」されます。そんな中で市民社会は何を語り、行動するべきか。各地からの参加者は各々の思いや考え、経験を共有し、これからも連携し合っていくことを語り合いながら、会を閉じました。
 
G7広島サミット当日のメディアワークへの参加
 
 G7での市民社会の活動の大きなヤマ場の一つは、首脳会合の日程に合わせて同会場の近隣に設置される国際メディアセンター(IMC)を拠点として行われるメディアワークと呼ばれる活動です。その詳細は、本報告と共に公開された本会世話人・堀内葵さんの報告をご覧いただければと思いますが、市民社会各団体は、メディアワークの現場で各団体の関心のある政策イシューについて活動するだけでなく、市民社会全体のメディアワークを支える活動も分担し合いながら活動を展開します。今回はG7広島サミットの首脳会合(5月19日(金)〜21日(日))に合わせて5月18日(木)〜22日(月)の日程で、広島市内の広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)にIMCが設置され、隣接する広島市青少年センターにC7含むエンゲージメントグループのためのワーキングスペース(以下、NGOスペース)が設けられましたが、両施設にまたがる活動のコーディネーションを、C7の国内ホスト組織である「G7市民社会コアリション2023」を中心に、市民社会各団体が協力しながら担っていました。この中で、NANCiSはメディアワークを中心に、G7広島サミット期間にサミット関連施設内外で行われる市民社会の活動全般において、市民社会スペースを「守り、広げる」観点から、活動状況のモニタリングやサポートを行いました。具体的には、1)もしもの事態への備え、2)街頭での直接行動との連携、3)さまざまな主張をもつ市民団体の発信機会の創出、などです。
 
 1)の「もしもの事態への備え」は、いわゆるデモ等での「救援」にあたる働きです。今回のメディアワークで計画された活動内容は、参加する各団体や人員に直接の暴力的な圧力や身柄拘束が生じる事態は考えにくいものでしたが、近年では珍しい都市部で開催されるG7サミットであることを踏まえ、予め数名の地元弁護士に待機と何らかの被害が生じた際の対応を依頼しました。その人選や依頼には、NANCiSと日頃連携する秘密保護法対策弁護団、共謀罪対策弁護団の皆さんにご協力いただきました。また、何らかの事態があった際に、市民社会として行うプレスリリースについても、事前に手順や案文の用意・確認がなされていました。また、C7の枠組みに参加しないグループが何らかの被害を被った際も、その状況や深刻度を勘案して、場合によっては発信することが想定されていました(今回、そうした対応が実際に行われることはありませんでした)。
 
 2)の街頭での直接行動との連携ですが、今回のG7サミットが都市部で行われることもあって、厳しい警備や交通規制をかいくぐりながら、さまざまなテーマや当事者性をもつグループがデモや集会等の街頭での直接行動を行いました。その中には、C7の枠組みに参加するグループもあれば、そうでないグループもありましたが、国際社会の中でより発言の機会を必要とするテーマや当事者性をもつグループや活動を中心に、IMCやNGOスペースで行われるメディアワークとの情報共有や連携を図れるようなコーディネート活動を行いました。一例として、5月19日(金)、21日(日)両日に行われた在日ミャンマー人コミュニティによるミャンマー民主化への協力をG7諸国に求めるデモ(*5)について、IMCやNGOスペースで活動する市民社会関係者もこれに参加するとともに、IMCやNGOスペースでもその様子を共有して、双方の連帯を示していくなどの活動がありました。
 
 3)も2)と同様で、メディアワークの中で多様な市民社会の立場や意見、とりわけマイノリティ性の高い立場や意見を伝えていくお手伝いを行いました。代表的なものとして、G7そのものへの異議申し立てや広島サミットの開催に反対する市民グループの見解のIMCやNGOセンターでの紹介(*6)や、モロッコによる占領状態が続くアフリカ・西サハラの問題をアピールするために、自転車で世界一周スピーキングツアーを行なっているスウェーデンの活動家2名の記者会見の開催(*7)などに協力しました。
 
おわりに 〜G7広島サミットにおける市民社会スペースの状況と今後への課題〜
 
 こうした活動を行いながら、NANCiSとしては市民社会による言論・活動空間としてのG7メカニズムや広島サミットの市民社会スペースの状況についてモニターしていたわけですが、その中で、いくつかの憂慮すべき点がありましたので、以下に挙げておきたいと思います(一部、本報告と共に公開される本会世話人・堀内葵さんの報告とも被りますがご容赦ください)。
 
1)ホスト国・日本政府の市民社会との政策対話に対する消極性
 G7/G20開催時に、一部のホスト国は市民社会ほかエンゲージメントグループの開くカウンターサミット/フォーラムに首脳が出席し、各セクターと直接対話を行うようになっていますが、今回、岸田首相はビジネスセクター等のエンゲージメントグループのフォーラムには参加したものの、C7サミットへの参加や市民社会との直接対話を行いませんでした。一方、C7による政策提言書については、首相官邸で代表者からの手交には応じました。また、C7サミット2023開催時に参加した日本政府のシェルパ、サブシェルパの対応は、前述のように、担当者個人の所属省庁を盾に「所管違い」として日本政府の見解を述べない、そもそも市民社会の問いに誠実に応答する姿勢を見せないなど、不誠実な対応が目立ちました。
 
2)IMC、NGOスペースでの問題
 ここについては、本報告と共に公開される本会世話人・堀内葵さんの報告で詳しく述べられますが、市民社会へのIMCパス(入構証)の交付数制限、NGOスペースがIMCセキュリティゲート外に追いやられたこと、IMC内のC7インフォメーションボードの無断撤去など、ホスト国・日本政府の市民社会に対する姿勢を疑わせる問題が数々あったことを指摘しておきます。これらの問題は日本政府がホスト国であった2016年のG7伊勢志摩サミット、2019年のG20大阪サミットでも共通することで、上記1)と合わせて日本政府が市民社会を軽んじる姿勢が顕著に現れた例といえるでしょう。
 
3)市民社会関係者への監視、権利侵害
 まず、NGOスペースが設けられた施設の上階が、サミット警備に動員された大阪府警の詰所となっていたことは、非常に不安を覚えるものでした。実際、サミット事務局(外務省)に認められたNGOスペース内外エリアでの市民社会のアクションを監視するように立哨する警察官の姿がみられたほか、市民社会側に運営を託されているNGOスペースでのトラブルに警察官が介入しようとする状況もありました。また、宿泊場所からメディアワークのためにIMCやNGOスペースへ移動する市民社会関係者、とりわけ中央・南アジア系の容貌をもつ関係者に警察官がつきまとう状況もみられました。
 また、先住民族、少数民族、民主化に携わる活動家がNGOスペース内でイベントや記者会見を開こうとする際、身元不明の人物がNGOスペースの受付を強行突破して立ち入ろうとしたり、受付を回避して立ち入りトラブルになるケースもありました。こうした人物はメガネやマスクで容貌を分かりにくくしているため、身元は不明ですが、これらの活動家に対して監視や牽制を行おうとする意図は明らかです。
 
4)市民生活や街頭活動への影響
 G7広島サミットは近年では珍しい大都市を会場としたサミットとなったことで、厳しい行動規制と警備が大都市中心部で行われることになりました。各国首脳の移動車列の通行により、歩行者、車両、路面電車が数十分〜1時間程度も「足止め」を食らうことも珍しくなく、会期中は文字通り「立錐の余地なく」警察官が立哨し、表通りばかりでなく裏通りまで24時間、常にどこでも警察官が歩いているという状況がみられました。当初危惧されていた、広島市内の都市機能が全面的にストップするということはなく、学校や幼稚園・保育園が休校・休園になった以外、多くの職場や店舗の営業は継続していましたが、いろいろな制約を受けることが多く、たまたま入ったレストランのオーナーは「祭りでもあると思って諦めるほかない」と言っておられました。市内を歩いていると、本来はIMCなどサミット関連施設の入構許可証であるIDカードを街中でつけたままのサミット関係者も多く、それが実際に何かの優遇につながったかどうかは分かりませんが、市民生活を阻害されている市民のいる街中で「特権階級」としてふるまっているようにもみえ、自分もその一人(C7のメンバーとしてIMCパスをもつ)であることに複雑な感情を抱かずにはいられませんでした。
 また、サミット期間中はデモ申請により街頭でのデモや集会そのものは可能ではあったものの、首脳会合が行われた元宇品、各首脳の宿泊が想定されるホテル周辺、実際には訪問だけでなく会議等も行われた平和公園やそれに面したIMC、NGOスペース周辺の街路・公園でのデモや集会は制限されました。また、C7に関わりがあったり、連絡を取り合った市民社会関係者によるデモ・集会は特に問題なく行われましたが、一部の新左翼党派が中心となって呼びかけたとみられるデモ・集会で、学生2名の逮捕者が出ています。
 
 以上のように、市民社会がアドボカシーを行う場としてのG7における市民社会スペースのあり方についての課題とともに、首脳会合が行われることや、そのための警備上の理由によって、市民生活やその中での活動が大きく制限を受け、とりわけ今回の開催地が大都市であったために、その弊害がより大きくなったというのが今回の印象です。G7やG20、その他の多国間の国際会議は今後も日本で開催される機会はあると思いますが、それに向けてこうした課題を継続的に議論の俎上に載せ、ホストとなる日本政府に改善を求めていくとともに、こうしたことの「おかしさ」を広く社会に訴えていくことが市民社会に求められているように思います。今回の全体の総括や継続的な取り組みの提起は、G7市民社会コアリション2023を中心に行われると思いますが、NANCiSも自らの守備範囲である「市民社会スペース」とG7/G20等の関わりについて、今後も継続して取り組んでいきたいと思います。
 

*1: G7広島サミットおよびC7における市民社会全体の活動概要と評価については、本報告と共に公開された、本会世話人・堀内葵さんの報告( https://nancis.org/2023/10/11/g7-c7-2023report01/ (2023.10.10閲覧) )を合わせてお読みいただきたい。
*2:NANCiSも作成に貢献したC7政策提言書やC7サミット2023の様子については、先述の堀内報告を合わせてお読みいただくと共に、以下リンク先ウェブサイトを参照のこと。
[C7ウェブサイト] https://civil7.org/ (2023.10.10閲覧)
[G7市民社会コアリション2023ウェブサイト] https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/ (2023.10.10閲覧)
*3:本項は、筆者寄稿のさっぽろ自由学校「遊」の機関紙『ゆうひろば』第186号(2023年4月)の記事「みんなの市民サミット2023(広島)分科会「『ラリー』と『ロビイング』のあいだで 〜市民社会とG7の関わりを問い直す〜」開催報告」を一部改変の上、掲載した。
*4:「あどぼの学校」については、以下リンク先を参照のこと。
[あどぼの学校ウェブサイト] https://www.advo-citizen.org/ (2023.10.10閲覧)
*5:詳細は「G7広島サミットを問う市民のつどい」ウェブサイト内の案内を参照のこと。
*6:具体的には「G7広島サミットを問う市民のつどい」が発出した「G7広島サミットを問う市民のつどい宣言」(日本語、英語、朝鮮語)をプレスリリースとして配布、説明した。
*7:詳しくは、以下「G7市民社会コアリション2023」ウェブサイト内広報および「西サハラ友の会」ウェブサイトを参照のこと。
[G7市民社会コアリション2023ウェブサイト内広報] https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/blog/230520-ngospace-westernsahara (2023.10.10閲覧)
[西サハラ友の会ウェブサイト] https://fwsjp.org/ (2023.10.10閲覧)